訳してみる・翻訳者疑似体験

外国語の学習のために、原書を読むことは大変効果的です。また、学習が進んでくれば、原書を読んでみたくなるものです。最初は慣れるために多読をめざし、読むのがいやにならないように、細かいところにとらわれすぎずざくざく進んで文章に慣れ、達成感を何度も味わうのも有効でしょうし、日本語訳の本や対訳本を手元に置いて、原文と訳文を見比べながら学習するのも良いでしょう。

もっと慣れてくれば、まとまりごとに、まず自分で訳してから「答え」の訳文に戻り、「答えあわせ」をするのも、生きた言葉の学習法として、また語彙力を付け、文章のパターンを身体に覚えさせるのによい学習法です。それにも慣れてきたら、次は、まるまるひとつの話を、自分で翻訳してみてはいかがでしょうか。

原書をただ読んでいっていた時には、日本語でだいたいの意味が理解できればよいのですが、それをしっかり「翻訳」してみようとすると、途端に見えてくることがあります。まず、文章の細かなニュアンスが目につきます。時制の本当のところ(現在なのか過去なのか、どのくらい過去なのか、など)や、そこで現されている気持ちの動きの細かいところまで、汲み取れていないと「翻訳」はできません。使われている単語が実際はどういうことを現すのかの微妙なところにまで気を配らないと、あとから読み返してちゃんとした日本語の文章にならないのです。知っていたつもりの単語についても、改めてよく調べることになりますし、似たような意味を表す単語が複数あった場合の使い分けについても、知っておく必要が出て来ます。そのへんの使い分けは実地で外国語を使う時に重要になってきますので、きちんと使えるようになっておくのは大切なことでしょう。

自分で「翻訳」をしようと思うと案外時間がかかってしまいますが、丁寧な学習はかなりのレベルアップに繋がります。あまり効率を重視せず、じっくり腰をすえて楽しみましょう。頻出単語は別のリストにして、参照したり覚えてしまうのもよいですね。

辞書を引く時間があまりにもかかってしまう、という場合には電子辞書に投資するのもよいかもしれません。価格はけしてお安くはないですので、ご自分の必要度に合わせて、検討してみてください。複数言語で電子辞書が販売されています。

インターネットで単語を検索することもできます。単語検索サイトには例文が載っていることも多く、また、関連文や単語にリンクが張ってあるので、知識を広げたりより理解を深めるのは大変便利です。ただ、言葉の意味を調べるためにでしたら、電子辞書の方が効率がいいようにも感じます。

このような「翻訳」をする時にも、特に始めのうちには、一つの話を仕上げたあと「答え合わせ」ができる、日本語訳のあるものを選んだ方がよいかもしれません。細かいところまで表現しようとする「翻訳」には、「誤訳」が案外つきもの。そこの修正をはかるために、最後に「答えあわせ」をしておきましょう。

がんばってひとつの話を訳し終えた時の達成感は格別です。また、この学習をしているうちに、日本語力の方もレベルアップしているというおまけつき。より上位のコミュニケーションを目指している人は、挑戦してみてはいかがでしょうか。