対訳本を読む・生のテキスト

対訳本、というものがあります。一冊の本の、片方のページに原文(外国語)、もう片方に日本語訳が載っているというものです。同じページの中に両方が一度に載っているレイアウトのものもあるようです。こういう本を外国語の学習に利用するのも便利ですね。

いっぺんに両方の文章が参照できるので、文章同士が見比べやすく、ひとつひとつの文章を理解したり覚えたりがしやすいのです。原書の本と日本語訳の本の二冊を並べるよりは使いやすいし持ち運びもらくになるので、外出時のすきま時間での学習にも使えます。また、辞書を引く時間が短縮できる(すぐそばに「答え」が載っている)ので一冊の原書を読み終わるのにかかる時間が大幅に減るという利点もありますが、あまりすぐ「答え」を見てばかりではただ二つの文章を見比べただけになってしまいますので、最初は対訳部分を隠して読むとか、原文と訳文をじっくりつきあわせて表現方法を学ぶとか、気になった単語や文章を抜き書きしてノートを作るのに役立てるなど、自分の目標や狙いに即して工夫した使い方をするのが良いでしょう。

原書にとにかくたくさん触れて、慣れておきたいという場合にも、使い様によっては短時間で一冊を読み終えられる対訳本は便利です。こうした対訳本は、いろんなジャンルのものが出ていまして、文学作品の対訳本(小説、そして詩など)、マンガ(スヌーピーのシリーズが有名)、そして学習者向けの対訳本などさまざまです。

原書を読むことに慣れてくれば、対訳本を使う必要は減ってきますが、文学作品や詩など、言葉の使い方を丁寧に学習したかったり味わいたい時には有効ですし、文章表現についていつも新しい発見があるので、より上のレベルの言葉の使いこなしを目指すためには良いものだと思います。

特に詩の場合は面白く読めるでしょう。詩はどうしても、原典以外では別のもの(別の、立派な作品になっていてそれはそのまま楽しめるのですが)になってしまいがちなので、意味を理解しながらそのままで原書のリズムや使っている言葉を味わうためには、対訳本が適していると思います。岩波文庫からは、そういう意図なのか、詩や文学作品が特に対訳本として出版されています。

また、主に英語が対象になりますが、映画作品の対訳本も出版されていますから、映画が好きな人はそれを使うと楽しく学習できるでしょう。有名な映画の台詞、ト書きが全て英語と日本語で書かれており、あの映画のあの場面の本当の台詞はこうだったのか、とか、この言葉をこう訳してたんだ、などの発見はとても楽しいものです。気のきいた言い回しなど会話の勉強に有効ですし、DVDと併用すれば、ヒアリングの教材にもなりそうです。

原書を読むということは、特に学習者を意識せず、読んでもらうことを前提に書かれた、いわば生の、いきいきとした文章を読むということ。そこからは一歩進んだ、よりリアルな、そして実践的な外国語の力がついてきます。そういう学習を実践するために、対訳本は強い味方になってくれそうですね。